ワーキングホリデービザでフランスへブルーチーズ修行に行くまでの話

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どうも、ブルーチーズドリーマー伊勢昇平です。

現在、ブルーチーズドリーマーとして日々美味しいブルーチーズを作っているわけですが、

過去に生意気にもスランプに陥ったことがあります。正確にはスランプというよりビギナーズラックの魔法がとけたと言った方がいいかもしれません。

悲劇は突然に

JAL国際線ファーストクラスの機内食にも決まり、各メディアにも取り上げられ、調子良くいっていた2012年、突然その日はやってきました。

いつものように大忙しで出荷しようと熟成庫のチーズを切ってみると、

あれ、青カビが生えていない。。

いやあ、たまたまうまくいかなかったのかなと思い、次のを切ってみると、やっぱり生えてない

全部切って断面をみて絶望。

全てのチーズが1つも青カビのかけらも生えてなかったんです。

つまり全部廃棄です。ここから苦悩が始まりました。

注文はどんどんくる。血の気が引きました。1件1件謝罪し出荷を全部止めて悩む日々が続きました。

何がわかってないのかわからない

販売を初めてから、すぐに品薄になり人気商品になりました。

最初から上手くいきすぎて、失敗した時の対処法がわかってませんでした

うまくいっているところしか見ていないのでちょっと軌道がずれただけで何もわからなくなりました。

学生が勉強していて、「何がわからないかがわからない」という末期的なやつです。
何がダメかわからないと当然、次の日も何をしていいかわからない
果てには牛乳の前で立ち尽くしてしまって製造が出来なくなってしまいました

それでも変わらず注文はどんどんくる。

なんとかしないと、試行錯誤
色々試してやっと良くなったと思えば、またダメになる。廃棄が出る。その繰り返しでした。
   
日本ではまだブルーチーズの製造はほとんど知られておらず、誰に聞いても原因はわからない
最初に作れたものは本で読んだ方法がたまたま上手くいっただけだったんです。

完全に調子に乗ってました。

自分には特別な能力があって失敗なんてするはずないと思っていました。

そしてこういう時は周りの失望が手に取るようにわかります。

辛かったです。よく牛舎や製造室で突然大声をあげて発狂していました。

そしてそれでもなんとかしようと新しい方法を試しました。

「今度こそはうまくいく!」

現実はそう甘くありませんでした。

以降3年間ずっとこの右往左往を繰り返し続け、苦しみ続けることになるのです。

自分はまだプロじゃなかった

あなたにとってプロとはなんですか?

そんな質問をされたとしたら、僕はこう答えます。

「いつでも、どんな状況でも常に平均点以上の仕事ができる人」
最初だけ、1回だけものすごい高評価の仕事ができるというのは実は全く大したことはありません。
その一回はたまたまできただけかもしれません。

大事なのはどんなタイミングでも、どんな環境でも、一定以上のパフォーマンスを発揮できることです。
そのためには変化に対応するあらゆる知識や技術が必要になります。

最高点にこだわること以上に最低点を上げる努力が大事になってきます。

決意の大晦日

2014年の大晦日、熟成庫にあるチーズを全部切ってやはり全部ダメならフランスで勉強し直そう。

そう決意してカット、カット、カット。

結果は、そうです。

やっぱり全部ダメ

もう一度ゼロから勉強し直そう。そして30から再スタートだ。
今までのはまだプロとしての準備段階だったと思うことにしました。

早速フランスのワーキングホリデーのビザを取得し、1度見学で訪れたことのあるオーベルニュのブルーチーズ専門の工場に「働かせてくれないか、給料はいらないから」というメールを何度も送り渋々了承を得ました。

フランスで修行するために出発の半年前から製造をストップしました。熟成庫を空にしてからじゃないとチーズ職人は動けません。
車、趣味だった自転車など売れるものは全部売ってお金に変えてオーベルニュへと向かいました。

選択肢すら残ってない時の人のエネルギーはすごい

よくフランスに単身で修行なんてすごい勇気ですねと言われますが他に選択肢がなかっただけなんです。

もう自分では解決ができない。知識と技術が確率しているところで学ぶしかない。ということです。消去法です。

でもたくさんの選択肢の中から選ぶよりも一つしかない道を「もうこれしかないんだ!」と覚悟決めて進む方がいい結果が出ることがあります。背水の陣ですね。

ビザの取得から語学の勉強、フランスで受け入れてくれるところとのやりとりなどものすごい量の手続きをこなしてました。

このままチーズが作れなくなったら自分の人生は終わると本気で考えていたので迷いはなかったです。

この時の経験のおかげで、今の複数の仕事をこなすテクニックを持つことができました。

人の人生は塞翁が馬、一喜一憂はしないで頑張っていれば大概のことは自分のプラスに変えられるものです。

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